鑑能レポ
・緑鷹会(05/10/30) (2005/11/13更新)
・天神ゆめ能はな狂言(05/10/29) (2005/11/13更新)
・喜多流九州哲門会(05/04/29) (2005/05/01更新)
・森本松濤会春の大会(05/04/24) (2005/04/24更新)

緑鷹会(05/10/30) (2005/11/13更新)
 
 大濠公園能楽堂にて、無料の会を見て来ました。よく知らずに途中から行ったら、出演者が子供ばかりでちょっと驚く。シテ方の鷹尾家中心の会らしく、有名な能楽師さんのお子様達が出ていて、なんだか得した気分。子供だからといって侮れません。個人的には鷹尾美里さんの舞囃子『菊慈童』が凛とした感じで好きでした。能『猩々』のシテも女性(鷹尾美幸さん)。美里さんは12才、美幸さんは11才くらい。将来が楽しみです♪

天神ゆめ能はな狂言(05/10/29) (2005/11/13更新)
 
 友達からありがたいお誘いを受けて、能と狂言を見に行って来ました(友達の友達が三味線を習っている関係で、無料券をいただいたのです)。あらうれしやな〜。
 シテ方の森本哲朗さん、狂言方の野村万禄さんのお話と、舞囃子『熊坂』、狂言『止動方角』、能『天鼓』の上演。同行者の内私以外はお能は初めてor2回目とあって、最初の舞囃子ではやはり皆眠そうにしていました(笑)。舞囃子は、能面や装束を着けずに能の一部分だけをお囃子つきで舞い謡うというもの。謡いが聞き取れなかったり意味が理解できなかったりすると、どこがクライマックスなのかも分からず結構退屈しがち。ハマって来ると、囃子のリズムが気持ちよいとか、なんだかよくわからないけど舞いの動作を見ていると楽しいと思えたりします。どういう内容なのか謡本などを読んで学習しておくともっと深く楽しめるかと思います。ちなみに囃子なしの仕舞いや、舞いもない素謡はもっと眠いぞ。
 『止動方角』は、横暴な主にこき使われる太郎冠者が、とうとうキレて報復に出るスリラー、いえコメディです。前半は、お腹を抱えて笑うほどでもなかったのですが、途中で馬が登場した時から目がパッチリ! もう視線は馬に釘付けです。チラシの写真の右下に写っているヤツ(その横の写真は拡大図)ですが、ちょっと見にくいかな〜。全然馬に見えないの。歌舞伎に出て来る馬は、人が二人入って、いかにも本物の馬のように動いて見せるけど、それとは大違い。人が一人、茶色のダブついた全身タイツみたいなのを着て、ボサボサのカツラをつけて、馬と言うよりは猿か変な妖怪みたいな面をつけて四つん這いで歩くのです。鳴き声は「ヒヒーッ!」。すごく怖いのです。前に見た狂言に出ていた猿とよく似ている。さらに昔、蚊が出て来る狂言も見たが、それはもっと怖かった。黒っぽい面の口がストローのように長く細く伸びていて、鳴き声(??)は「プーッ!」でした。
 能『天鼓』は、鼓の名手の少年が、帝に鼓を奪われた挙げ句殺されてしまったが、後日弔われて喜びの舞いを舞うというような天真爛漫なお話。とてもきれいで軽やか、無垢な雰囲気があってよかったです。

喜多流九州哲門会(05/04/29) (2005/05/01更新)
 
 4月29日、またしても無料の会に行って来ました。喜多流九州哲門会。この日も早く起きることが出来ず、能が始まる辺りから出かけました。
 大変暑い日だったので、入り口で番組をもらってから、とりあえずロビーの椅子にかけて汗が引くのを待つことにしました。舞台上の音をマイクで拾ったものがロビーに流れていて、大体どの辺りをやっているのかがわかります。謡いの触りを聴いてどの曲か判断するのは私にはむずかしいのですが、お囃子が聞こえていたので、番組の順番から言って舞囃子だなと見当がつきました。この時のお囃子がとてもよかった。常々、能のリズムは複雑でなかなかアヴァンギャルドだと思っています。そうしたつかみがたい拍子が絶妙にからみあい調和して、なんとも言えず気持ちのよい音を作っていました。ことに笛の音が、極上。能楽師のうま下手など全然わからないままに、ただうっとりとしてしまいました。
 曲の切れ間に中に入って、舞囃子と独吟をいくつか鑑賞。最初、正面桟敷席に座ったのですが、カメラマンが場所を占拠していて、パシャパシャ音を立てて撮影をするのに閉口し、脇正面の椅子席に移りました。仕事を受けてやっているカメラマンに罪はなく、素人の会では出演者の知人などの撮影・録音も許可されていることが多く無料なので文句は言えませんが、一応舞台なんだから、観る者の気持ちも考慮してくれればなあ……という気もします。
 お目当ての能『羽衣』は、お馴染み天女の羽衣伝説に基づいたお話です。天に帰れないので羽衣を返して下さい〜と訴える天女が可憐! 最初姿を現さずに声だけかけて、なかなか返してくれないのでそーっと出て来て、悲しそうにしている様がとてもカワイイです。時として違和感を覚えてしまう面や装束も、おシテさんの姿にぴったりとマッチし、羽衣をつけて舞う様子など、実に軽やかで、天人らしかったです。装束は、冠の上に牡丹の花が載ったもので、羽衣は朱色でした。個人的には白の方が天女っぽい気がします。お囃子は、鬼神などが出て来る能の囃子に似て、「きれいな顔していても人間ではないんだ」という神秘的な、大げさに言うとちょっと怖い一面を匂わせている感じがしました。
 脇正面のはじっこに座っていたので、最後橋がかりを通って行くシテがすぐ近くで見られました。側で見てもきれいでした。最後の数歩、後ろ向きにツツツと下がって退場していったお茶目な姿(多分、舞込という小書=演出)が忘れられません。
 この能は一場のみで、羽衣も舞台上で身につけます。登場人物は漁夫と天女だけで、ストーリーもシンプルかつ馴染み深いので、能を初めて観る人にもおすすめです。


森本松濤会春の大会(05/04/24) (2005/04/24更新)

 気持ち良く晴れた日曜日。のんびり昼寝もいいなと思ったけど、今日森本能舞台で催される会は、無料で能が見られて、お昼ごはんまでつくという(番組には「粗飯」と記載あり)。さもしいけれど、そういう大切な機会は逃したくないのでせっせと支度して出かけました。
 能の無料の会のほとんどは、素人さんの発表会ですが、プロの方も出演しておられ、素人さんの中にもうまい方はいらっしゃいます。うま下手の区別自体ろくに出来ない私のようなものには嬉しい催し。関係者でなくても普通に入場出来ます。袴姿で能の一部分だけを舞う仕舞、謡いだけの素謡、仕舞にお囃子がついた舞囃子などが多く、面や装束をつけて通しで行う能は毎回あるとは限りません。仕舞や素謡も面白いが、やはり装束つけてストーリーにそってやってくれた方が見ごたえがあります。
 この日の会「森本松涛会春の大会」は、森本能舞台四十周年記念とのことで、4/23、24の二日間、午前9時から午後5時近くまで行われたようです。眠かったので能の部分だけ見に行くことにしました。1時半くらいに到着。動物園入り口バス停を降りて、徒歩2、3分です。バス停から能舞台への道沿いに、古い木造家屋が何軒か建っていて、木塀越しに花や緑がこぼれて何ともいえぬいい雰囲気を醸していました。
 会場についてビックリ。「能楽堂でなく能舞台だから小さいところなんだろうな〜私設ってことよね〜?」くらいには思っていたのですが、あくまで和風の建物を想像していたもので……。といっても、ベルサイユ宮殿みたいな会場だったわけではありません。普通のきれいな住宅のような外観。住宅にしては大きいけれども、四十周年という古さは感じません。リフォームしたのかな? 玄関で靴を脱ぐようになっていて、どうも他人の家に上がり込んでいる気分になります。二階に上がると休憩所があって、さっそくいなり寿司とお茶を頂きました。お能の会って、お弟子さんや大学の能楽部の学生さんが受付等手伝っていることが多くて、爽やかに応対してくれるので好きです。
 満腹になり、素謡が終わって能が始まる間に素早く見所(客席)へ移動。大濠能楽堂に比べるとさすがに狭い。その分舞台が間近に見られるのは嬉しい限り。能楽堂と言えば、建物の中に屋根つきの能舞台が収まっているので初めて見た人には珍しがられますが、ここの能舞台は屋根部分が天井にめり込むように作られていました。そんなに天井を高く出来ないのでしょう。それでも立派な舞台です。意外に観客の収容力もあるようで、くつろげました。
 能『安達原』、よかったです。ストーリーは大体以下のような感じ:旅の山伏が人里離れた荒野の一軒家に住む老婆に、一夜の宿を借る。老婆は二人を招き入れ、糸つむぎをしながら、自分の孤独な身の上などを語った後、薪を取りに行くと行って外へ出る。寝室の中を決して見るなと言いおいた老婆の言葉に、かえって好奇心を刺激されてしまった山伏の連れが、こっそり寝室を覗いてみると、そこには天井に届くほど積み重なった死体の山が。正体がばれた老婆は鬼女に変化し、山伏に襲いかかるが、やがて祈り伏せられて、山奥へと消えて行くのであった――。  プロ・アマを考えずに素直に面白く見る事が出来ました。前半部分では、一人孤独に生き続ける空しさ、はかなさを訴えて、中入り(シテが前半と後半の間で一度舞台裏に引っ込むこと)寸前に寝室を覗くなよとねちっこく念を押す不気味さを醸し、後半ではキビキビとした鬼の動きを見せるという三様の表現がうまく出来ていたなあと感じられました。声の通るおシテさんだったので謡も聞き取りやすかったです。山伏は二人いて、しかも一人は背の高い方だったため、小柄な鬼女がちょっと可哀相になっちゃいました。
 その後は学生さんの連吟。男子学生、声でかっ! 元気だねー勢いあるねーとほほ笑んでしまいました。しかし、能の舞台で若い人を見るのは珍しいことではない。伝統芸能というと、年寄りが幅をきかせているイメージがあるけど、老若問わずよく舞台に立ってらっしゃいます。能・狂言は女性のプロも結構いるし。そして能楽師にはイケ面が多い気がする。皆さんカコいいです(力説)。
 次の舞囃子まで見て帰りました。お囃子って、ホントにぎやか〜〜。それこそ、能=静かでスローという印象がありますが、曲と箇所によっては相当うるさい。イヨッ、ホッ、ポン、ポン、ペーン!、ヒョロロ〜〜、ヌオオ〜〜(と聞こえる謡い)、ヨオッ、ホンミョウオッ、タン、タタン!(足拍子)、ヌオオ〜オオ〜、ポン! ポンッ!、トンタントンタントンタントンタン……(太鼓)などなど(以上順不同でイメージ再現してみました)。特に今日は、鼓膜にビリビリと反響するくらいの勢いでした。
 ところで、今回は発表会らしく録音・撮影部隊が多く、えらい先生が退場する時にはやたらと拍手が鳴り響いていたりして、ちょっと笑えました。本当は能も興業でもっと稼げるようにならないといけないんだろうけど(多分現状では素人の月謝が大事な収入源)、おかげで無料の会もあるんだし、こういうのもいいよねと思いながら帰路についたのでありました。



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送