CDレビュー
・Yoshii Lovinson『WHITE ROOM』 (2005/06/19更新)
・サントラ『ベッカムに恋して』は拾い物 (2005/04/23更新)
・Aerosmith "Honkin' on Bobo" (2004/05/20更新)

Yoshii Lovinson『WHITE ROOM』 (2005/06/19更新)


 前作(ソロ一作目『at the BLACK HALL』)は暗く重たく、イエロー・モンキー時代にいつに間にか出来た傷のかさぶたみたいだったが、今回はそのかさぶたが取れて淡いピンク色の皮膚が再生したってところでしょうか。やっと本格的にYOSHII LOVINSON誕生・始動という感じ。前のアルバムと2枚対になって一つの核をなすイメージです。 「徐々にで そう徐々にでいいから/赤みを帯びて目を覚ませピンク」(9曲目「トブヨウニ」)「羽ばたけ 羽ばたけ 羽ばたけ/元気出せ 元気出せ/もう恐れることなかれ」(1曲目「PHOENIX」)「走るコース 走るコース/今競技中」(8曲目「NATURALLY」)など、前向きで清清しい歌詞が目立ちます。イエロー・モンキーとして活動していた頃は、時代と微妙にずれていたのが、今回きれいに古くささが払拭されているのに驚きました。かつ、言葉遊び、エロス、グラムっぽい部分も控えめではあるが健在で、それがかえって自然体でいいです。イエロー・モンキー・ファンでも、そうでない人にも受け入れられそうな一枚。

1)PHOENIX
 出だしのアコギ掻き鳴らしがかっこいい。疾走感、力強さを孕みながらどこか切ない雰囲気もある。最後の1フレーズ(前述の「羽ばたけ 羽ばたけ(略)」)、ベタな歌詞なのにサラッと聴けて秀逸。
2)CALL ME
 しぶいシングル・カット曲。ストレートなラブソング風の歌詞の中に才気あふれる言い回しが詰め込まれている(「折り畳みの真実が空しい」はケータイのことか? 他に「枝切られる 枝切られる/都会では両手を伸ばせない」「「I LOVE YOU」「I LOVE YOU」が灰になる」「雑草みたいにさりげなく/アスファルトを突き破りたい、、」等)。バラード調かと思えばハードな展開を見せる構成はイエロー・モンキーの「球根」に近い?
3)欲望
 ベース音ぶりぶりでダーク、エロティックな雰囲気はイエロー・モンキーっぽいが、「オレのみっともない欲望」「欲しくない欲しくない」「生命ちらつかせ試さないで」とストイック志向。「ボウボウメラメラとチューチューネバネバとヒューヒュードロドロと体中で醜い音立てて」、これが見事に小気味よく音に乗っている言語&リズム感に脱帽。
4)WANTED AND SHEEP
 アルバム・ジャケットの雰囲気と重なる曲。WANTED AND SHEEPのANDが最初聞き取れず、お尋ね者の羊って何じゃそれ(笑)と怪しんでいたのですが、お尋ね者「と」羊でした……orz
5)RAINBOW
 これも最初聴いた時は変な曲、と思った。いきなり、「銀世界で死んだスキーヤー」だもの。しかも変なところに区切り(息つぎ)が入って、♪ぎんせ〜、かいで〜、死んだスキーヤー♪ と歌われても……と思っていたのだが、ギターソロとその後のフレーズ(「壁もペイント 床もペイント」〜のくだり)がすごくいいです。
6)JUST A LITTLE DAY
 バランスのいいミドル・チューン。亡くなった友達の歌だけどおだやかで明るい雰囲気。「毎日が慌ただしくて/何のために生きてるのかさえ/忘れるね」と聴くと、ロック歌手もサラリーマンも主婦もみんな同じなんだなあとホッとする。
7)FINAL COUNTDOWN
 イエロー・モンキー風の、ヒーセ好みっぽい曲。ライブでは定番曲になりそうな華があります。サビが「鼻かんだ〜♪」と聞こえるのは空耳どころではない。
8)NATURALLY
 個人的に歌詞が好き。中盤の「ぶきっちょでまっすぐはいいんじゃない?」は、最初、毒気抜け過ぎと思ったけど、音の乗せ方絶妙でイイ。
9)トブヨウニ
 最初の軽やかなギターの音色が、「風に揺れている白いカーテンが」という歌詞にぴったりで気持ちいい。風や陽の光、陽の匂いが感じられる曲。さりげない生活感が心憎い「外行こうよ 海見ないか」、目に浮かぶような「風に流れる髪にも運命は宿っていて/光りスライドさせるほど眩しいのに君はなぜ?」、思わず納得の「捨ててしまったもの戻ってこないけれど/なくしてしまったものなら急に帰ってくることあるんだぜ」。タイトルもセンスあるなあ。
10)FOR ME NOW
 これは結構ロックっぽい。歌詞はユニークかつ鋭い。
11)WHAT TIME
 重く乾いた調子でインパクトがある。聞き込むほどに味が出て来る曲。


サントラ『ベッカムに恋して』 (2005/04/23更新)


 タイトルだけ見て、しょーもないミーハー(死語?)な映画と思い込んでいたところ、ロンドン在住のインド系の女の子が主人公、しかも舞台は私も訪れたことのあるサウソール(ロンドン西にあるインド人街)と聞いてレンタル・ビデオ屋に走りました。
 ストーリーは、ロンドンのコテコテのインド人家庭で育った主人公が、サッカーをやっては「人前で半裸で走り回るなんて!」と怒られ、アイルランド人の男性に恋して反対されて、恋とサッカーと家族との板ばさみになって悩みながら成長して行く――というもの。異文化の一家の騒動を描いたものとしては、『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』に似ているが、主人公が若いだけにもっとストレートで鮮度あふれる感じ。その分ちょっと青臭くご都合主義のような気がしなくもないけれど、結婚式&ダンスシーンの楽しさに小ネタの面白さ、そして音楽の秀逸さでうまくカバー出来ているかなと思います。
 さて本題のサントラ。映画を見ていて「お!」と思ったのはアルバムの3曲目に収録されているBackyard Dogの"Baddest Ruffest"。主人公が公園で男友達とサッカーをしている短いシーンで流れます。パンク、テクノ、スカなどをミックスしたような軽妙な音楽と、女の子のボールを追う姿がうまくリンクしてかっこよかった。
 次に印象的だった曲が4曲目・17曲目などに収録されているバングラ・ミュージック。バングラとは、インド〜パキスタンにまたがるパンジャブ地方の音楽がイギリスに渡ってアレンジされたものらしいが、インドちっくな打楽器の音、阿波踊りに似たリズムが面白いダンス・ミュージックという感じでかなり好みです。
 かと言って、ダンスビートばかりではなく意外な曲が入っている。スタカンのポール・ウェラーもカバーしていたCurtis Mayfieldの"Move On Up"、なつかしのBlondie"Atomic"(イエモンのとある曲を思い出す)、ベッカム女房の"I Wish"、インド風に味付けされた"Hot,ho,hot"、他に爽やか系ロックや、ゆるい曲も詰め込まれていて実に楽しい。そして、ところどころに映画のワンシーンのダイアログが挿入されているのだが、ツボを押さえた会話ばかりが抜き出されていて笑えます。
 ダイアログ例→『熟れたマンゴー』(サリーを作るため採寸されている主人公。体のラインが出ないくらい大きく作ってと頼む主人公を、それじゃモテないじゃないの! と叱る母親。そこで採寸していた中年女性が一言)「心配しないで。私のデザインなら、この虫刺されだってジューシーな熟れ熟れマンゴーに変身よ!」
 『目を伏せて』結婚式のホーム・ビデオ撮影者:「ハーイ目を伏せて〜悲しそうにしてね〜笑っちゃダメよ〜〜インドの花嫁は笑ったらダメ〜! せっかくのホーム・ビデオが台なしじゃないか〜〜」


Aerosmith "Honkin' on Bobo" (2004/05/20更新)


 ブルースのカバーアルバム? オリジナルじゃないんなら、買わなくてもいいか――なんて侮るなかれ! 思いきりエアロ・サウンドです。それも七十年代の。過去の栄光にすがろうとしたとか、気をてらったカバーをやろうとした形跡はまるでなく、むしろ伸び伸びとやりたいようにやったら"Rocks"みたいになっちゃった的なのが面白い。
 サウンド・チェックのような音がワァーンと鳴る中、スティーヴンの「レディース&ジェントルメェーーン!」という声が飛び出すオープニングは茶目っ気たっぷりで、こうした趣向は再結成後のエアロの「らしさ」。一曲目"Road Runner"と、続く"Shame,Shame,Shame"は軽快なロックンロールです。
 三曲目"Eyesight To The Blind"でググッとブルージィになります。スティーヴンって本当に歌もハーモニカもうまい。Paul Santoのピアノもはまっています。
 四番目はシングル曲で一番の目玉"Baby,Please Don't Go"。まさに「闇夜のヘヴィ・ロック」、"Toys In The Attic"、"Train Kept A Rollin'"辺りを彷佛とさせるドロドロとした疾走感がたまりません!
 次はうって変わってソウルフルな"Never Loved A Girl"、アレサ・フランクリンのカバーです。奇遇にも、今回のアルバムとともにアレサの六十年代ヒット・ナンバー集を購入していた私。さっそく原曲の"Never Loved A Man"と聴き比べてみました。比較的原曲に忠実で、自然なカバーになっています。
 六曲目はジョー・ペリーがリード・ヴォーカルを取る"Back Back Train"。地味な泥臭い曲ですが、Tracy Bonhamなる女性ヴォーカリストとの掛け合いに入り、終盤に向かうにつれだんだんと力強さを増して行くのが感動的です。オリジナルのFred MacDowellは長い間農夫兼ギタリストとして活躍したカントリーブルースマンなのだとか。なるほど、地の匂い(田舎や農村の芝居を地芝居と言ったりする時の、あの「地」です)がするのも納得が行きます。何と言うか、藁とか土の匂いのする曲。
 次の"You Gotta Move"は初期の音に再結成後の重厚な骨太サウンドをミックスしたような、モロなエアロ節。どこがカバー? と言いたくなるほど堂々と決まっています。特に中盤以降がイイ。こんなギター・リフを生で聴いたら失神してしまいそう。
 ここまで来てやっと、アルバム中唯一のオリジナル曲"The Grind"の登場です。ゆるめのテンポで、"Cryin'"などに通じるものがありながらメロウ過ぎず、心地よく聴ける良曲。
 "I'm Ready"。ブラッドが好みそうな(?)ドローンとしたイントロのこの曲は、マディ・ウォーターズのカバーで有名。まるで別物です。曲をいじり倒しているというわけではないのに、不思議なものです。
 "Temperature"。これは素直にブルースっぽい。昔のレコードの雰囲気を出しているのか変なくぐもったヴォーカルになっています。
 そしてお馴染みの"Stop Messin' Around"。ライブの後半、最高潮の盛り上がりを見せるジョー・ペリー・ブルース・コーナーの定番カバー曲、待望の公式音源化です。イントロを聴くだけでも血が騒ぐのはエアロヘッズの証でしょうか。ステージ上のジョーが目に浮かびます。
 最後を飾るのはゴスペル・ナンバーの"Jesus Is On The Main Line"。エアロといえば、黒人音楽の影響も見逃せません。バック・ヴォーカルにスティーヴンの娘・チェルシーの名があるのが微笑ましい。
 主だった曲だけ感想を書こうとしたら全曲解説になってしまいました。最近のポップなエアロが好きな人にはいまいちと思われる向きもあり、オリジナル・アルバムでなくてはいう声も耳にするものの、力作であることは確か。バンドと共同でプロデュースをしたジャック・ダグラスの力もあったのか、全体からにじみ出る臨場感、まさにライブ会場にいるような気分にさせてくれる迫力があります。ブルースが好き、ロックが、音楽が好き、というメンバーの想いも伝わって来るようです。
 ちなみに、限定版特典のハーモニカ・キーチェーン、ホーナー社製でちゃんと音も鳴るんだそうです。ただの飾りと思って私はおまけなしの方を買ったのですが。国内盤のボーナス・トラック"Jaded"は、取り合わせが悪そう。輸入版は曲数少なめのタイトな感触がそのまま楽しめます。



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